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もくじ
『LAMB/ラム』プチ情報
異色中の異色作品です(R-15指定)。これまで観たどの映画にも似ていない独特な世界。観終わって、どんな感想を持つか、試してみるのも面白いと思います。怖いもの見たさにどうぞ☆彡
『LAMB/ラム』のあらすじ
マリアとイングヴァルは人里離れた山奥で羊牧場を営む中年夫婦である。ある日、ある羊の出産に立ち会った。驚くことに、その羊が産んだ羊は通常の羊ではなかった。頭部が羊、身体の胸から下が人間だった(手は片方だけが人間の手)。二人はショックを受けつつも、その羊を家に迎え入れ、自分たちの子供のように育てることにし、アダと名付けた。
『LAMB/ラム』予告編
出典:A24|Official Trailer
『LAMB/ラム』の作品情報/キャスト
原題 | Lamb |
公開 | 2021 |
ジャンル | ホラー |
監督 | ヴァルディマル・ヨハンソン |
出演 | ノオミ・ラパス、ヒナミル・スナイル・グヴズナソン ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン |
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『LAMB/ラム』のレビュー・感想・考察(ネタバレ注意)
以下は本作に対するmmの感想と考察です、ネタバレが含まれますのでご注意ください
度肝を抜く作品
観終わって最初の感想は、「これ何?ホラーなの?」。解説では、「ネイチャーホラー」というジャンルで紹介されていたが・・・。
・・・羊がとんでもないことになっている物語。異色すぎる作品。
かつてここまでキンキーな作品は観たことが無い・・・。
ある羊が出産した。主人公カップルは出産に立ち会う。なんと、その羊が生んだ羊は普通の羊ではなかった。
マリアはその子羊を抱っこする。我が子のように。
最初は上半身の羊部分だけしか映っていなかったので、子羊を抱っこしている風にしか見えない。少しずつ子羊の全身が映し出されるようカメラが引いていく。
すると、後ろ姿の子羊の下半身が映し出され、そこには、つるんとした人間のお尻と足が2本!!
何か凄いものを見た、ショッキングな映像!!と共に、なぜか笑いが込み上げてくる。
これ、コメディ??
アイスランドの景色が美しい。登場人物もほぼ3人+子羊人間(!?)。セリフが少なく、とても静かな作品。
妖気漂うスピリテュアルな景色は、同じくアイスランド映画の『春にして君を想う』(1991)を思い出させる。
しかし、物語が向かう方向性は真逆だ。『春にして君を想う』は、老人カップルがあの世へ向かう様子を描いていたが、『LAMB/ラム』はあの世からやって来た何か(羊?)を描いている。
不思議なことに、頭部が羊、下半身が人間の子羊人間(以下、子羊君)は、あまり怖くない。極めて不気味な光景だけど、しばらく観ていたら、慣れる。つぶらな瞳が可愛らしいとさえ思える(羊だから表情はない)。
子羊君の性格は大人しい。慎ましく、夫婦の愛情を受けて人間の家で人間の服を着て暮らしている。子羊君は平和主義者のようだ。
なお、北米の配給権をA24が取得したとのこと。どおりで、『ミッド・サマー』や『パール』と同じニオイのするホラー作品だと思った。
セリフが少なすぎて話が見えない
『LAMB/ラム』は極端にセリフの少ない映画だ。全体を通じて、登場人物たちはほとんど言葉を交わさず、その代わりに視覚的な表現と音響が物語を紡いでいる。このアプローチは、映画の神秘的で不穏な雰囲気を強調する一方で、ストーリーを理解するのがとても難しくなる。
言葉が極力排除されることで、観客はキャラクターの内面や物語の進行を自ら解釈せざるを得ない。マリアとイングヴァルという夫婦の心情や関係性がセリフなしで描かれるため、その行動や感情の変化を追うのが困難になる。
特に、物語の背景やキャラクターの動機が明確にされないため、観客は常に物語の核心に触れるための手掛かりを探し続けることになる。
このような言葉の不足は、映画のテーマやメッセージが不明瞭になり、視覚や音響に対する解釈が重要となる。セリフが少ないことで、映画の神秘性が高まり、観客に深い思索を促す一方で、物語の一貫性や理解が難しくなっている。この手法が成功するかどうかは、観客の解釈力や感受性に大きく依存することになる。
そういうわけで、この映画が何を描いているかは、サッパリ解らなかった。自分なりの解釈もひねり出せない。世界観が超越していて、思考が追いつかない。
ラスト、成人した裸の羊人間が銃を持っていたけど、どこから調達した銃?
狂った夫婦
マリアとイングヴァルの夫婦仲は良さそう。一見、ごくごくノーマルな中年カップル。
しかし、この夫婦、相当頭がおかしい。狂っている。最近人気のホラー作品の特徴、「人がホラー」の典型パターン。
ある羊から生まれ落ちたのが、半羊人間であるというのに、一瞬驚きつつも、すんなり受入れる。
凄い許容範囲!!
子羊君を家に連れて行き、自分の子供として育て始める。そして、二人そろって、「幸せ」だと言う。満ち足りた表情。
この一連の流れが、狂気としか言いようがない。二人はかつて娘を亡くしたことが後の方で描かれているが、それで完全に精神がおかしくなっていたということなのだろうか。
BGMもなく、いたって静かに描き続けることが、夫婦の「怖さ」を増幅させる。
羊飼いのマリアが色っぽいのも、気味悪い。
また、マリアの様子は、『ポゼッション』(1981)のイザベル・アジャーニのような妖気を感じさせる。白痴美というか、明らかに何かに憑りつかれた感じ。『ポゼッション』のイザベル・アジャーニは、エイリアンのような、ヒトではない奇妙な生物と不倫していたっけ。『ポゼッション』は、『LAMB/ラム』の先を行く狂った映画かもしれない。もっと意味不明です。一度ご覧になってもいいかもしれません。
マリアは、子羊君の実母である母羊を射殺する。母羊は我が子をマリア夫婦に取られて、心配し、家の周りをうろついていた。マリアは母羊が疎ましかった。
ラストも意味不明
『LAMB/ラム』のラストシーンもハテナ極まりない。
突如、裸の成人した半羊人間が現れ、イングヴァルを銃殺して子羊君を連れて深い山に消えた。あの世に行ったということか?
成人した半羊人間の裸の後ろ姿。お尻の形状から、男性なのだなということが解る。
やはりコメディか?
首から血を流す夫を前にして号泣していたマリアだが、ふと何かが頭をよぎり、その涙がピタッと止まる。
そして、暫く奇妙な表情のマリアの横顔が画面の真ん中に。エンドクレジット。
一体何?これから何を理解したらいいというのか?
『クラッシュ』とは違う意味で、全く脳の処理能力が追い付かない。
ラストシーンは、視覚的には衝撃的でありながらも、その象徴するものが不明確過ぎて、物語全体のメッセージが伝わりにくい。マリアとイングヴァルの運命や半羊人間の存在がどのように結びついているのか、観客には解釈の幅が広がり、映画のテーマについての深い考察を促すが、それが明確な形で提示されることはない。
ラストの意味不明さが、映画全体の神秘性や独自性を強調し、観客に強い印象を残す一方で、その解釈に関しては多くの議論が生まれるだろう。その曖昧な結末によって、観客に深い思索を促し、同時にその神秘的な雰囲気をより一層際立たせる作品となっている。
『LAMB/ラム』は、セリフの少なさ、狂気の夫婦、美しい風景と半羊人間の奇妙な組み合わせ、そして意味不明なラストシーンによって、ホラー映画としての新たな挑戦を示している(前述のとおり、途中何回かコメディの疑いを持ったものの、流石に、終始静かで真面目なトーンで実はコメディはなかろうという結論に至る)。観客に強い印象を与える一方で、その解釈や理解には個々の感受性が大きく関わってくる作品である。
観客の解釈に委ねる所が大きいのだから、ある意味、サッパリ解らなかったという感想も許容されるだろう。
子羊君と半羊人間のお尻ショットが最も心に残る。
『LAMB/ラム』のまとめ
- 度肝を抜くショッキングな映像は、類似作品が見当たらない
- 子羊君の姿は当初ショッキングではあったが、可愛らしいと思える
- 夫婦の狂気がホラー
- 奥さんの狂いぶりは『ポゼッション』のイザベル・アジャーニを想起させる(が、『ポゼッション』のイザベル・アジャーニの方がより怖い)
- 子羊君、半羊人間のお尻ショットが印象的
- 最近ホラー界隈で大人気の、A24的ホラー