イヴの総て(1950)☆憎たらしいイヴからも学ぶところがありました

ドラマ

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引用元:20th Century Studios/Official Trailer

ある夜、新人女優イヴ・ハリントンは演劇界最高の賞であるセイラ・シドンス賞を受賞する。しかし、彼女の業界経験は驚くほど短い。ほんの8カ月前、彼女はブロードウェーの大御所舞台女優マーゴ・チャニングに付き人となったばかりだった。授賞式の最中、マーゴを初め、イヴを知る関係者の表情は穏やかではない。果たしてイヴは如何にして短期間でスターの座を掴むことができたのだろうか。

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1951年アカデミー賞で作品賞等6部門に輝いた名作です。皆さんも、人生の中でイヴのような人に遭遇してきたと思います。ドロドロした演劇界の内幕劇と評されることが多いですが、個人的には割とアッサリした印象を受けます。ベティ・デイビスの引き際が良かったからでしょうか。クラッシックの名作、おすすめです☆彡

原題All About Eve
公開1950
ジャンルドラマ
監督ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
出演ベティ・デイビス、アン・バクスター
セレステ・ホルム、ジョージ・サンダース
マリリン・モンロー
受賞1961年アカデミー賞作品賞等6部門、カンヌ映画祭グランプリ
英国アカデミー賞作品賞、ゴールデングローブ賞脚本賞
ニューヨーク映画批評家協会賞
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以下は本作に対するmmの感想と考察です

非常に平たく言うと、したたかな田舎娘が大御所女優を踏み台にしてブロードウェーで舞台女優としてのし上がっていくという物語である。ベティ・デイビス、アン・バクスターの好演によって、アカデミー賞とカンヌ映画祭グランプリ等数々の賞に輝き、大成功を収めた。

本作は今やクラッシック映画の名作である。が、最近は、「マリリン・モンローの初期の作品」という物語とあまり関係のない扱われ方をされている。マリリン・モンローは物語の筋に一切絡んでこないにも関わらず。ベティ・デイビスとアン・バクスターの印象は吹っ飛んでしまった感がある。その証拠に、この映画のDVDのパッケージは端役のマリリン・モンローの写真だけで、ベティ・デイビスとアン・バクスターもいない。販売側が一般の人にも知名度の高いマリリン・モンローを全面に出す宣伝にシフトしてしまっている。

作品の中身と無関係な女優の名声によって、後に作品の扱われ方も変わってしまうなんて何とも理不尽な扱われ方。もはやベティ・デイビスもアン・バクスターも亡くなっているので、出演者から文句は出ることはないけれども、DVDのパッケージの表紙に端役を全面にフィーチャーするのはやり過ぎな感じもする。パッケージをだけを見て購入した人はマリリン・モンローの映画と勘違いするだろう。

観客はイヴに親近感があるのではないか。多くの人にとって、人生で一度はイヴ的な人に遭遇したことがあるのではないか。小学校や中学校、職場で。あなたがイヴの場合は、気付かなかったかもしれない。

私も、かつてイヴ的な人と同じ空間を共有したことがある。イヴは学校にもいたけど、職場にいたイヴの方がキョーレツだった。その人(女性)は、狡猾というよりは自己アピールの塊で、事ある毎に自己の有能さを会話に挟み込んでいた。上下関係のない人間関係においては、彼女の自己アピールが鬱陶しく彼女に反撃する人もいたが、上司には受け入れられていた。自分で仕事をするタイプであれば自己アピールも致し方ないと思うが、こういう人に限って他人に仕事をやらせるのが上手である。

私は彼女のようなタイプが大の苦手だ。彼女のような人は上司からのウケは良い。そこがいつまでも理解できなかった。私にとっては、彼女は性格が良い人と到底思えなかった。良い人が常に出世するわけではないのが組織であるけれども。上司は人間性の良し悪しで部下を評価しないというのを知ってはいたが、賛同できなかった。

イヴ的な人の持っているパワーとは、何なのだろう。私は自己アピールが苦手なので、自己アピールがすんなりできる人の行動や言動が意味不明である。また、私がいた職場の上司はそれをすんなり信じるタイプの人がばかりだったので、上司という人種は目が節穴なのかと思えてならなかった。

しかし、この二人、イヴ的な人と上司は、パズルのピースがぴったりはまるように、(仕事上)相思相愛のようだ。イヴは上司が人を見るポイントを的確に押さえ、上司はイヴを会社に貢献できる人間と評価する。イヴにはどんなスキルが備わっているというのだろうか。

過去のイヴ的な人を思い出しながら本作を観ていると、ある事に気付く。

イヴが持っているもの、それは、心底自分を信じて疑わないとう単純さ。

イヴは、マーゴの付き人時代から自らの能力を高く評価し、その能力を確信している。極めて自分に優しい人だ。自分を顧みない人とも言える。もっと悪く言うと、サイコパスだ。

私にとっては、イヴはもうサイコパスにしか見えない。が、周囲は、特に上司等上層部の人間は、このイヴ的な人を高~く評価してきた。それは何故か。一体全体どういう現象なのだろう。

それは、こういうことではないかと思う。つまり、イヴが持つ自分を信じて疑わない心(=自己主張の激しさ、厚かましさ)は、彼女の態度を大きく見せ(自信満々だから)、他人の心に大いに影響する。そして、他人はそんな人に仕事を依頼したいと思う。その人を信頼するという所まで発展する、ということではないか。

人は、自信のある人間の話を聴く。そして、その人を強い人と認知し、その人の言葉を信じる。つまり、話すときに自信を持って話せば、中身は薄くてもコミュニケーションが成立する。なぜなら、話す中身が正確かどうかは同じ業界の者ではない限り瞬時に解らないし、根拠を調べる時間さえない。それよりは、話す雰囲気に安定感や力強さがあれば、それで持ってその人を信じる所まで行けるということだろう。対人関係の心理というのか、世の中で良く見かける手法だろう。

賢明な人間はイヴの正体を直ぐに見破る。本作でも、イヴは、マーゴやその恋人、劇作家夫妻には早々にバレて、総スカンを食らっている。

しかし、職場のイヴは、会社が単純で野心的な人間を好む傾向にある事を踏まえると、その性格は末永く受け入れられ、会社組織においては安泰であろう。当然のことながら、会社にとって従業員は単なる企業戦士であって家族でも何でもない。従業員はしたたかで厚かましい位がメンタルを病むことなくちょうどいいのだ。

イヴ的な要素を少し取り入れることができたら、仕事上の人間関係は、もしかしたら円滑に進むところもあるかもしれない。

前述の通り、イヴは大成功する。彼女の計画通りである。しかし、彼女の成功を心から祝う者はいない。

イヴにとっては、そんなことはどうでもいい。彼女は端っから仲良しクラブに入りたいと思っていない。彼女の正体を良く知らない人と仕事をすればいいだけである。

田舎出の新人女優イヴにしてやられたということであるが、結果的に、マーゴにとっては良かったのではないか。マーゴも40歳で若くない。ヒロインばかりではなく、お母さん役にシフトしていかないといけないお年頃である。ずっと美人女優畑でやってくると、中々老け役に回ることは難しいだろう。

マーゴはイヴとの戦いに敗れて、自分を顧みる。そして、恋人の大切さを再認識し、アッサリ結婚する。マーゴがそれまでの名声にしがみつこうとしなかったことを称賛する。マーゴの女優生命が途絶えたわけではないが、彼女はイヴの若さを受け入れ、自己の老いを受け入れた。

マーゴも若かったら徹底的にイヴと戦っていただろう。人生経験を経て許容範囲が広くなったのだろう。イヴがいなかったら、まだまだ女優としてやっていけると思って、結婚には踏み切らなかったかもしれないマーゴに発想の転換をもたらした。それによってマーゴの人生は寧ろ好転し、精神的には安定方向へを向かうと思われる。

イヴは成功を手にしたが、所詮それは一時的なものであるということがラストで描かれている。近い将来、第2のイヴにのし上がられて敗北するということであるが、その時、イヴにマーゴの恋人のような人がいるだろうか。恐らくいないだろう。

マーゴの引き際の良さを見ていると、『おいしい給食/School Meals Time season 2』で甘利田先生が生徒に放った謎のフレーズを思い出した。

「1組の人間関係はここらで仕上げにかかる。自らのポジションを全うせよ。」

解るようでよく解らない、破壊力のあるフレーズ。人間関係を俯瞰的に見て、自らの立ち位置を貫くべしということかな。

自己に対する評価を俯瞰的に見る、他人の評価を受け入れるということは非常に苦しく辛い、中々できないものである。大抵、他人の評価は自己評価より悪い評価だから。会社でも人事評価は従業員にとって常に不満の対象だ。

大衆に顔を晒して仕事をする最も高ストレスな職業である女優業にあって、物わかり良くメンタルを病まない常識的なマーゴは、実は精神力が半端ではない。イヴという黒船にやられても、あたふたしない。強靭な精神と共に、ある意味柔軟でもある。人間の力量は自己アピールや要領の良さではなく、他人に影響されない意志の強さ、精神力である。

この映画のイヴはマリリン・モンローではなく、アン・バクスターである。

アン・バクスター=イヴは、最初は純真無垢な田舎出の娘で、何のツテもない、大女優マーゴに憧れるだけの単なるいち追っかけから、マーゴの付き人になり、自分も女優となってバシバシ演劇界でステップアップしてのし上がっていく。人の心を巧みに読んで人に取り入るのがとんでもなく上手な狡猾女である。

アン・バクスターは、狡猾なイヴを見事に好演、野心の塊、ヒールの演技が素晴らしく上手だった。だって、イヴには、ただただ憎たらしいだけの感情しかなかったから。

ずーっと観ていて腑に落ちないのはアン・バクスターの容姿である。物語の設定上、イヴは若くて可憐な24歳という設定のはず。が、残念ながら、この映画のアン・バクスターに若さは一切感じられない。彼女の実年齢も当時20代後半であったというのに。

イヴは、初めから生活感のあるしっかりしたおばさんにしか見えない。これはどういうことか。アン・バクスターのしっかりした顔つきのせいか(しっかりした顔の美人である)。それとも、もう少し首の伸びが足りないせいか。でも、物語の設定上、イヴは若いということになっている。これには大いに違和感がある。最後に登場する第2のイヴの方が余程華奢で可憐だった。

だから、いくらイヴが頭の回転が速くて人に取り入るのが恐ろしく上手くても、彼女のおばさんフェイスで8カ月の超短期決戦で演劇界をのし上がっていくことができましたという話にはリアリティが感じ取れなかった(リアリティは要らないのだろうけど)。

マリリン・モンローは狡猾な所は一切なく、若くて初々しい。所謂お色気たっぷりのナイスバディのマリリン・モンローではない。若さだけなら、マリリン・モンローがイヴを演じたら、しっくり来たかもしれない。でも、当時のマリリン・モンローはイヴ同様本当に新人女優だったので、狡猾な演技ができなかったかもしれない。

  • DVDのパッケージはマリリン・モンローだが、彼女は端役である
  • イヴの持つ自己肯定力の高さや厚かましさも見習いたい(できる範囲で)
  • マーゴの引き際が良し
  • イヴ役のアン・バクスターの演技は上手だったが、24歳には見えない
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