汚れた血(1986)|Mauvais Sang☆フランス|レオス・カラックス|ドニ・ラヴァン|ジュリエット・ビノシュ

すてきな恋愛

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フランス発80年代屈指のアート映画です。映像・構成・カラー・音楽・役者さん、どこを取ってもスタイリッシュ、とってもカッコイイ映画です!アート系が好きという方は必見です!

近未来のパリ。愛のないセックスで感染する新種のウィルスが蔓延していた。カードマジックでその日暮らしをする青年アレックスは、彼を慕う恋人リーズとの関係に空しさを感じていた。行方不明の父が轢死し、アレックスは父の莫大な借金を背負う。借金返済のために強盗団に入ったところ、運命の女アンナと出会う。

出典元:CARLOTTA FILMS US/Official Trailer

原題Mauvais Sang
公開1986
ジャンル恋愛
監督レオス・カラックス
キャストドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、
ジュリー・デルピー、ミシェル・ピコリ
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以下は本作に対するmmの感想と考察です

20代前半の時にこの作品を観た。その衝撃といったら。

昔、本作が大嫌いだと言った男子がいた。こんなにもスタイリッシュでなオシャレなうえに、監督までイケメンってどういうこと!!と憤っていた。

確かに、彼の主張には一理ある。イケメンなうえにこんなにもオシャレな作品を創ってしまう監督には、完敗である。

アート系映画の最高峰『汚れた血』は、カラックスの非凡な映像芸術が爆発した作品である。カラックスの独自の視点とジャン=イヴ・エスコフィエによる斬新な映像表現が、物語の奥深さと人間の複雑な心理を見事に描き出している。

同時代のフランス映画、ジャン=ジャック・ベネックスの『ディーバ』(1981)も勿論大好きだけど、本作のアート作品としてのクオリティの高さは際立っている。

物語は、カラックスの分身として描かれている主人公のアレックス(ドニ・ラヴァン)が、自らの運命と向き合う過程を追う。彼は孤独で不安定な存在でありながら、内に秘めた情熱と衝動によって駆り立てられる。アレックスの内面の葛藤と外界との摩擦が、映画全体に緊張感をもたらす。

ドニ・ラヴァンは、その独特な容姿と情熱的な演技で、キャラクターの複雑さを見事に表現している。彼の存在感あふれる演技が、物語の核心に深い感情を添えている。

カラックスの映像表現は、独特の美しさと不穏さを併せ持っている。本作はカラックスの美意識の頂点のような作品。彼の作品は常に夢と現実の境界線を揺らぎ、観客を幻想的な世界へと誘う。

特に、映画全体を貫く独特の色彩や映像の構図は、その印象を一層深めている。前作『ボーイ・ミーツ・ガール』よりも本作の方がより研ぎ澄まされたカッコいい映像がふんだんに織り込まれている。

『汚れた血』は、単なる物語の展開を追うだけでなく、観客に考えさせる要素を豊富に含んでいる。人間の欲望や孤独、愛情の複雑さなど、深いテーマが映画の随所に散りばめられており、観客に多角的な視点から物語を捉えさせる。

しかしながら、本作はアート系映画ならではの独自の雰囲気を持っているため、一部の観客には理解し難いかもしれない。また、カラックス監督の映像表現は一部の人々にはポエティックすぎると感じられるかもしれないが、それが作品の魅力でもある。

総じて、『汚れた血』は80年代のフランス映画界における重要な作品の一つであり、その独創性と美しさは今なお多くの映画ファンを魅了している。カラックスの才能と、若手俳優たちの情熱的な演技が結集したこの作品は、アート系映画の傑作として高く評価されるにふさわしい。

物語の舞台は近未来という設定であるが、その設定はあまり重要ではない。強盗団の話でもあるが、物語の本質ではない。ではテーマはというと、シンプルに恋愛である。

鬱屈した闇に苛まれて世界との距離感を縮められない孤独な若者アレックスが、運命的に出会ったアンナに初めて抱いた恋。

アンナが現れて、やっと世界と繋がったと思いきや、年上好きだからって言われてアッサリフラれる。それでも何とか彼女から愛を獲得したい。

失恋をする人はもう一人。アレックスを追いかける少女リーズ。アレックスの心が自分にはもうないことを理解しつつも、アレックスを追い求める。

ここで考えたいのは、恋とは何か、ということ。なぜ恋をするとその人のことを一日中考え、追い求めるのか。失恋する二人は、相手を得られないことが分かっていても、相手を追いかける。

恋とは孤独からの解放、というのが私の意見。恋する相手に出会ったら、まるで分身に出会ったような感覚に陥る。この感覚が麻薬的。ルックスがドンピシャなのか、気が非常に合うのか、ケースバイケースではあるけれども。いずれにせよ、やっと出会えた、もう一人じゃない、もう孤独で寂しい闇の時間から解放される時が来たという安堵が沸いてくる。だから、やっと孤独から逃れさせてくれる相手に出会ったなら、必死に追いかける。恋愛中毒になってしまうのは、孤独が背景あるから。

また、恋をしていないとき、世間で起こっている事柄と自分との間に大きな溝があるように感じる。TVで流れてくるニュースは全て他人事、他山の石という感覚。到底自分事と思えず、更には、無意識の中に自分は社会のメンバーに入っていなという感覚。

ところが、恋をすると途端に、世間の人々の言っていることが実感を持って良く理解できるようになる。小説や映画の物語の意味が良く理解できるようになる。そして、やっと自分も社会と繋がったという感覚を得る。孤独で世界の端っこに長らくいたのに、恋たしたことで世間に歩み寄れた感じ。だから、恋をすること、そして恋愛は、社会への理解も総合的に学ばさせてくれる副作用もあるように思う。

アレックスがアンナに言う愛の告白。

「もし今、君とすれ違ったら、全世界とすれ違うことになる。僕が愛しているのは君だ。」

ドニ・ラヴァンという俳優は、まず風貌が極めて個性的。いじめられっ子のような雰囲気を持ちつつも、誰とも混じろうとしない強い意思を感じさせる、強固な孤独感で一杯。人と対峙する時はいつも、まるでゴリアテに立ち向かうダビデのような臨戦態勢。

お顔は、普通に拝見すると残念ながらいわゆる二枚目ではないと思ってしまうものの、このカラックス作品ではサイコーにカッコ良く見えるのだから不思議だ。

俊敏な動き、暗い横顔、大人を絶対に信じていない孤独な表情。

横顔がストップモーションで静止するところなんて、ロックバンドのミュージックビデオのよう。ツンツンしたヘアスタイルといい、80年代のロックバンドのボーカルの雰囲気を持っている。

何より、タバコの吸い方。長いタバコの端っこを加えて、慣れた吸い方がカッコいい。

カラックス作品以外では、『ツバル』(2001)という作品にも出演。ピエロのような役どころだったので、本作ほどドニ・ラヴァンがカッコよく撮影されているわけではなかった・・・。(とはいえ『ツバル』もアート系映画ではかなり好きな作品。カラックス以外のドニ・ラヴァン作品ではおすすめ。)

やっぱり、ドニ・ラヴァンは本作が一番。動きも抜群にキレがあって、素敵。

二人の女優、ジュリエット・ビノシュとジュリー・デルピーの最も番美しい時を観ることができるというのもこの作品の良い所。この時の二人は瑞々しく、気が遠くなるくらい抜群の透明感。二人を見るためだけにこの作品を観る価値は十分あるといっても過言ではない。彼女たちの完璧な美しさで、カラックスの美意識が最高潮に達していることが解るだろう。

特に、十分大人なのに無垢な少女にしか見えないジュリエット・ビノシュの雰囲気が悪魔的。迷子の子犬のような表情の連続で、クラクラするぐらい魅力的。表情といい、仕草といい、その可愛いさは格別。短髪姿が初々しい中学生女子のようでもあるのに。『アパートの鍵貸します』(1960)の時のシャーリー・マクレーンやピーターパンの時の榊原郁恵に似てなくもないが、この時のジュリエット・ビノシュはもっと不思議な空間にいる可憐で繊細。因みに、ジュリエット・ビノシュと榊原郁恵は大カテゴリーでは同じ分類に入るよね。シャーリー・マクレーンは、どちらかというと中村メイコと同じカテゴリーかな。

ジュリー・デルピーは役柄上、出演時間はそれ程多くはないものの、こちらも抜群の美少女ぶり。金髪ロングヘアでいわゆるフランス人形。どっちかというとこっちが正統派美少女とも言える。ジュリー・デルピー派という男子も沢山いることでしょう。彼女はカラックスから体重が増えないように毎日チェックされたり、バイクのシーンで負傷しても直ぐに病院に連れて行ってもらえなかったり、演技指導も厳しく、相当うんざりして嫌な記憶しかないらしい。

二人とも抜群の可憐な美貌に加えて特に美しく撮影されているが、当時、カラックスとビノシュは恋人同士だったので、ジュリー・デルピーよりもビノシュの可愛さを引き立てるように撮影することになるのは当然のことである。

アレックスが突如デビッド・ボウイの「モダン・ラヴ」で深夜の通りを走り出す。この疾走シーンはもしかすると本作の最大の名シーンかもしれない、あまりにも有名。カッコいいことこの上なし。


偶然『フランシス・ハ』(2012)という映画を観ていたら、この「アレックスの疾走」と全く同じシーンがあった。同じように「モダン・ラヴ」で主人公(この映画では女性)疾走する。『フランシス・ハ』の監督も本作に凄く影響を受けた監督なのだなというのが一瞬にして理解できた。

他にも名シーンがてんこ盛り。

冒頭、ドニ・ラヴァンとジュリーデルピーが裸で森の中から歩いてくるシーン。カッコよすぎて。二人とも全然楽しそうな表情でもなく真面目な顏して真っすぐ前を見て歩調を合わせて颯爽と歩く。

パラシュートで仰向けになるジュリエット・ビノシュを上から撮影しているシーン。彼女の背後から放射線状に伸びたパラシュートのロープが絵画を鑑賞しているよう。どうやって撮影したのか。

ジュリエット・ビノシュが自分の口からふうっと風を送って、前髪をゆらゆらさせるシーン。小学生みたいで、可愛すぎ。

ドニ・ラヴァンが暗い自室で、部屋の天井電気の電源ひもと格闘しながら留守番電話を聞くシーン。日本では、ここで流れるクラッシック音楽で、多くの人がソフトバンクのCMを思い出すことでしょう。

ドニ・ラヴァンの場末のサーカスにいるピエロのような怖い腹話術。

ドニ・ラヴァンの人型が残ったベッド。

シェービングクリームで戯れるドニ・ラヴァンとジュリエット・ビノシュ。

全体的に夜のシーンが多く暗い背景が多いのに、鮮やかな赤や青の服を持ってくる色合いも最高にオシャレ。

  • 80年代アート系映画の最高峰
  • 色々な設定はあるが、本筋は恋愛映画
  • ドニ・ラヴァンはこの作品が最高にカッコいい
  • 二人の女優の美少女ぶり・透明度が抜群、彼女たちを見るだけでも価値あり
  • 随所に映像的工夫が施され、オシャレ・カッコいいシーンがてんこ盛り
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