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もくじ
『ボヘミアン・ラプソディー 』のあらすじ
1970年、ロンドンのライブハウスに通う内向的な青年はあるバンドに注目していた。青年は、偶然そのバンドのボーカルが空席になったと聞かされ加入する。その青年こそが後のフレディ・マーキュリー。ブライアン・メイ、ロジャー・テイラーとの邂逅である。ジョン・ディーコンも加入し、クイーンとして音楽活動を開始。間もなく派手なステージパフォーマンスで観客を魅了していくフレディ。彼は、クイーンとして知名度を上げていく中、恋人メアリー・オースティンとも婚約したが・・・。ロック至上重要なバンドの一つ、クイーンとフレディの半生を描く伝記物語。
既にファンの方にとっては観たくない映画かもしれません。私もそうでした。然し、ファンであれば一度は観賞しておかないとという気持ちで観ました。クイーンをご存じない方には良い入門素材だと思います☆彡
出典元:20th Century Studios/Official Trailer
『ボヘミアン・ラプソディー 』の作品情報/キャスト
原題 | Bohemian Rhapsody |
公開 | 2018 |
ジャンル | ドラマ |
監督 | ブライアン・シンガー |
出演 | ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、 グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョゼフ・マゼロ |
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『ボヘミアン・ラプソディー 』のレビュー・感想
以下は本作に対するmmの感想と考察です
FM802でクイーンに出会う
洋楽にはまったきっかけは、ラジオ。高1の時、ヘッドホンステレオを大阪の日本橋で購入し、毎日16時からFM802の「ロックキッズ802」を聴くという習慣がついた。FM802は開局数年の頃、今よりも洋楽を流す頻度が高かった。
定番の洋楽はリスナーのリクエストがなくても頻繁に流される。勿論、クイーンも。
因みに、FM802ではお笑い要素があるDJが沢山配備されていて、ザ・大阪のFMという感じ。お喋りも上手かつ音楽知識も豊富なDJが華麗に曲を紹介する。DJが曲のボーカルパートが始まるまでギリギリまでしゃべるのも802DJの特徴。なので、エア・チェックすると、DJのしゃべくりももれなく入る。エア・チェックした曲は老後の楽しみに聴こうと思っていたので、DJ込みでもそれはそれで面白い思い出になるかなと、バンバンDJ込みで録音。近隣のFM大阪のDJはお行儀が良く、曲を流す前にきちんとお喋りを終え、エア・チェックリスナーを配慮していた。
一番最初に好きになったのは「バイシクル・レース」。何て遊び心満載の楽しい曲なんだ。自転車のチリンチリンも入ってる。歌詞はフザけていても、メロディ最高。しかし、PVを観て初めて理解した。これは性的な曲だったのね。裸のお姉さん達が自転車に乗って、ゆる~いレースを繰り広げる。自転車というのはあることのメタファーだったのね。所々カッコいい舞台チックなメロディーで性のお戯れを表現するなんて、キワモノバンド扱いされるキワキワ路線を行っている。PVではお姉さんたちが出演しているけど、フレディはゲイだからきっと男同士のお戯れをイメージしているのだろう。
次に好きになったのは「ドントストップミーナウ」。これまたエロティックな曲。これは歌詞を聴いていると直ぐにわかる、性的な絶頂を表現しているって。何とストレートな。しかし、これまたメロディが疾走感溢れる、絶頂を超えて死に迫っていくイメージが見事に表現されていて何とも芸術的。2022年、エリザベス女王即位70周年の式典「プラチナ・ジュビリー」でも、フレディの後継フロントマン、アダム・ランバートがバッキンガム宮殿の前で全世界に向けて熱唱したのもわかる。クイーンの曲は凄くエロティックなのに、全くエロティックさを感じさせない。
FM802で洋楽を勉強して、自分の好きな洋楽も段々と解ってきたころ。クイーンの曲が突出していることに気付くのは早かった。絢爛豪華で、メロディが予測不能。エロティックな遊びと真面目の間、闇と狂乱の間を行ったり来たりして表現された曲の数々。
そして高いロッククオリティの背後にある悲しいにおい。これはフレディの悲しさではなかろうか。特に、フレディのピアノが悲しさを巧みに表現している。
ビッグバンドには、必ず非凡人がいる。クイーンの場合は勿論フレディ・マーキュリー。非凡人が持っている悲しさと闇。これが単なるエネルギーを爆発させただけの音楽とは一線を画する大きな要素となる。それを感じ取れるのがクイーンの音楽であり、フレディ自身。音楽的な技巧も格段に優れているが、創作の前提となる暗さの部分に何よりも惹かれた。
クイーンビギナー向け
フレディが放つ押し出しの強い圧倒的な存在感。アジテーションの高いパフォーマンスは、今なお観客の脳髄を鷲掴みにして止まない。
本作は、非常に人見知りで内向的で繊細な性格だったフレディががロックバンドのフロントマンとして開花し、屈指のメルディーメーカーとして君臨するに至る背景を描いた音楽映画。
しかし、サラっと描いている感は否めない。フレディの苦悩を表現するのしても、薄っぺらい。ファンなら誰もが知っている事ばかりで、新鮮味はなく表面的。
誰に向けた映画かというと、クイーンやフレディ・マーキュリーを知らない人に向けたものと言っていいだろう。
フレディが自らのセクシュアリティに苦悩し、メアリー・オースティンと婚約するも結婚せず、男に心の拠り所を求め、最愛の恋人ジム・ハットンに出会っていく過程は描かれてはいるけれども、何とも浅い描写。事実を映像化しただけというか。
亡くなっているフレディの心の内を探ることは到底できないけれども、フレディが幼少から持っていて、大人になっても引き続き消えなかった苦悩がクイーンの音楽性に大いに影響しているという繋がりにフォーカスされていると、彼の人生とクイーンの音楽がより理解できる構造になっていたと思う。
監督のフレディとクイーンの読解がも一つ足りない感じがしてならない。それとも、制作側のパワーが強くてビギナー向けに徹して深入りしない雇われ監督の作品なのだろうか。
日本との関係が描かれていなくて残念
日本とクイーンは相思相愛なのはあまりにも有名な話。なのに映画では完全無視。クイーンは日本で最初に人気が出て、世界的に波及していったという事実がひとつも描かれていない。
フレディはロンドンの自宅に日本庭園を造る程の日本びいき。お忍びでも何度も来日したことは有名な話。
「Teo Toriatte (手を取りあって)」という最高に暗く美しい、フレディ作の曲がある。日本ツアーの時は必ず演奏してくれる。その日本語フレーズの美しいことこの上ない。外国語であるのにこんなにも美しいフレーズの歌詞を創ることができるとは。聴いたことが無いという方は、ぜひ聴いてみましょう。美しいメロディと歌詞に驚愕するでしょう。
メンバーがフレディをリスペクト
クイーンというバンドは超インテリバンドでも有名。メンバー全員が作曲でき、かつ、メンバーが何らかの専門家である。ギターのブライアン・メイは天文学者、ドラムのロジャー・テイラーは歯学科専攻→生物学専攻→理学博士、ベースのジョン・ディーコンは電子工学専攻。フレディはアートを専攻し、クイーンのロゴマークを制作。
華々しい経歴を持つ他のメンバーも、大輪の花・フレディを前にすると影が薄い。映画でも、フレディ役のラミ・マレック以外のメンバーへのフォーカス度合いが極めて低いのが残念だった。
しかし、各メンバー、ルックスがそれなりに似ている俳優さんを配役しているところが嬉しい。ラミ・マレックが一番似ていなかったと思う。
ブライアン・メイやロジャー・テイラーは、他のバンドだったらフロントマンとしてのタレント性は十分だし、それなりに華もある。唯一無二のフレディの存在によって、せっかく才能があるのにその存在が薄くなって不憫としか言いようがない。
でも、各メンバーは、フレディに悩まされた過去もあったが、それよりもフレディの圧倒的キャラクターに非常に感謝している。だからこそフレディ亡き後もなおクイーンとして活動している。メンバーもフレディのファンなのだ。ジョン・ディーコンに至ってはフレディの死に打ちのめされ、クイーンとしての活動もままならなくなった。そういうジョン・ディーコンの姿にも共感できる。クイーンとして活動を継続するブライアン・メイやロジャー・テイラーにも勿論共感する。
伝説のバンドではなく現役のバンド
フレディが1991年11月に亡くなった。しかし、クイーンは現役のバンドである。ブライアン・メイもロジャー・テイラーも、まさか新しいボーカルを迎えて現在も存続するとは夢にも思っていなかっただろう。フレディの代わりはいない。それは誰しもの共通認識。にも関わらず、フレディの面影を見たい、クイーンの曲を聴きたいというニーズが絶大だった。二人は、1992年のフレディ・マーキュリー追悼コンサートでのジョージ・マイケル「Somebody To Love」にヒントを得たのではなかろうか。彼は勿論大成功している歌手なので観客を魅了するパフォーマンスは当然できたけれども、このコンサートでの彼の歌唱は突出していた。これを見て、他の人をボーカルを迎えるという選択肢もあるのだなと。
そして、「アメリカン・アイドル」の準優勝者アダム・ランバートとの出会いを経て、現在の活動へと至る。
メンバーは、色々あったけど、現在もなおフレディという人をリスペクトしている。これは現在のクイーンの活動から理解できるところであって、映画で強く描かれていたわけではない。映画で描かれているのは1985年のライブ・エイドまで。
ブライアン・メイとロジャー・テイラーが、フレディ亡き後もクイーンを辞めないという選択をした理由にも迫っていたら、誰も想像しなしなかった稀有な形で存続するクイーンという類まれなるバンドを理解することに役だったのではと思えてならない。
クイーンのライブ会場に行くと、ファンはそこにいない人=フレディのことを想いながらクイーンを観る。
『ボヘミアン・ラプソディー 』のまとめ
- クイーンをまだ知らない方にとってはおすすめ
- クイーンファンには、サラっと描かれていて物足りないかも
- 日本との繋がりは描かれていないことが残念
- メンバーは似ている俳優さんたちを配役していて嬉しい
- 伝説のバンドではなく現役のバンドという観点でも描けたかも