誰が私を殺したか(1964)|Dead ringer☆USA|ポール・ヘンリード|ベディ・デイビス

すてきなホラー・スリラー・ミステリー

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大女優ベティ・デイビスの双子映画、それだけで恐怖です。彼女を前にすると、若く美しい女優さんも出る幕はありません。一人二役のシーンは今観ても上手に編集できていいます。思わず80年代の大ヒットタイムスリップSF超大作と比べてみましたが、本作の方が技術的に高いのではと個人的に感じます。老いてなお新境地を開拓するべティ・デイビスの姿に元気をもらう傑作サスペンスです☆

長期間疎遠になって暮らしていた双子の姉妹が、妹の夫の葬式で再会した。妹は富豪、姉は貧乏だった。二人は久しぶりに会話を交わす。妹の豪邸を訪問し、妹の豪勢な暮らしぶりを垣間見た姉。妹の夫は姉のかつての恋人だった。姉は、帰路の途中、運転手から驚くべき真実を聞き、妹への憎悪を募らせる。そして、ある考えを思いつく・・・。

出典元:Warner Archive/Official Trailer

原題Dead ringer
公開1964
ジャンルサスペンス
監督ポール・ヘンリード
出演ベティ・デイビス、カール・マルデン
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以下は本作に対するmmの感想と考察です

ホラーの傑作『何がジェーンに起こったか/What Ever Happened to Baby Jane?』(1962年)で完全復活した大女優ベティ・デイビス。その後に出演した同様のサスペンス作品の1本。

当時、今よりももっと美人女優はニコっと笑っていればいいという時代だったと思う。が、そんな頃に、老人に差し掛かっても益々、それまでの皆が持っていたであろう彼女のイメージを打ち破っていって次々と狂った演技を惜しみなく披露し、自ら新境地を開拓していった女優、ベティ・デイビス。

『何がジェーンに起こったか/What Ever Happened to Baby Jane?』の狂乱の演技は、人々の度肝を抜いて止まない。それに比べると、本作の方はまだ観易く、静かでソフトな狂乱ぶりのベティ・デイビスと言えよう。ベティ・デイビス入門者にとっては入りやすい1本であり、ホラーに慣れていない人は本作を先に鑑賞することをお勧めする。

原題の『Dead ringer』とは、「そっくり」「生き写し」という意味である。本作に合っているのは「生き写し」の方だ。「生き写し」という翻訳も言語の妖しいニュアンスを残していて秀逸である。しかし、本作のようなホラースリラーでdeadを使っているからには、ダブルミーニングが込められているではなかろうかと思って、もう少し言葉の意味を考えてみる。dead=死というのは容易に解るが、ringer=残存する、長引く、いつまでも残ると言った意味もあるらしい。「残存する死」「死が残る」という意味も込められているとしたら、本作のストーリーで姉が辿る不穏な運命を暗示しているとも言えそうだ。だから、単に『Twins(双子)』と言った安易なタイトルにしなかったのではないかなと思う。

本作を知ったのは、ベティ・デイビス演じる初老の双子が左右に座って会話しているシーンの写真をインターネットの記事で見かけたのがきっかけだった。そのシーンを見ただけで、面白そうと思った。だって、年老いたベティ・デイビスが二人並んでいるだけで、不穏な雰囲気が抜群。それだけで、観たい!という気分になった。

『シャイニング』(1980年)にも、少女の双子がホテルで並んで立っているシーンがあるが、それだけでも怖さ抜群。なんてことないシーンなのに。双生児というものが持っている神秘性というものがあるのかもしれない。同じ顏が二人いるというのはそれだけで、不自然な感じを受けるからだろうか。

もっと行き過ぎたバージョンが最近の作品にあった。『MEN 同じ顏の男たち』(2022年)というホラー。村で出会う住人の男性が、少年、牧師等、年齢や商業に関係なく皆同じ顏という奇怪なホラーストーリーである。もう双子どころの騒ぎではない。ホラーを通り越してコメディのような感じさえする。

見た目もさることながら、本作では双子の呪縛という部分も描かれている。片方が片方に入れ替わってもなお、片方が犯した犯罪から逃れられない袋小路。

ベティ・デイビスは、今の女優さんだったら、個人的にはアマンダ・セイフリッドとよく似ていると思う。特に迫力ある大きい目がよく似ている。白目の割合が多いという目の構造的な所も。

声は低くハリがあって、良く通る。段々、森光子の顏が浮かんで来る(米TVドラマ「ジェシカおばさんの事件簿」の主人公ジェシカ・フレッチャーの声を思い出してほしい)。

因みに、子供の頃に晩年の森光子の私服姿をTVで見たことがある。着物ではなく洋服姿で、濃い緑色のヒラヒラがついているロングスカートのワンピースに、パーマがかった黒髪ロングヘアで、少女のような雰囲気があった。何とも言えない違和感を感じたのを記憶している。その時既に80代だったと思うけれども、女優さんっていつまでも気分は随分と若くて、異世界に住んでいるのだなと思った。本作ではないが、私服姿の森光子は、さながら『ふるえて眠れ/Hush… Hush, Sweet Charlotte』(1964年)のベティ・デイビスのようだった。

ベティ・デイビスが姉妹の双方を演じ、二人が同じ画面にいるシーンも何度か前半に配置されている。パソコンもCGもない時代にどうやって編集したのだろうか。そのシーンもどこにも不自然な所がなく、非常に上手く制作されている。当時のハリウッドの技術者は凄腕の人がいたのだなと唸る。

『バック・トゥ・ザ・フーチャーPART II』(1989年)の、1985年のビフ青年と2015年のビフ老人が会話する車のシーンがあるが、そっちの方がよっぽど不自然な映像になっている箇所がある(特に、二人のビフが車の前部座席で左右に並んで座っている所で、左から右へ“スポーツ年鑑”が放り投げられるシーン)。

一人二役を同じ画面に登場させるシーンの典型的な作り方は、左右に配置した場面を夫々撮影して、夫々のフィルムを真ん中で切って貼り合わせるという。ビフのシーンもそのように制作したのかどうかはわからないけど、明らかに真ん中を意識した配置・構図となっている(ビフの車のフロントガラスの中央には、上から下に支えのようなバーが構造的に存在するが、一人二役シーンを撮影するためにわざと鉄の棒が入る構造となっているような気がしてならない)。

あと、過去に行ったマーティがパパとママの高校のパーティの舞台でバンドのボーカルとして歌っているPART Iのシーンで、PART IIのマーティが舞台の上に設置されたハシゴを渡る。このシーンでマーティが画面上に二人(歌っているマーティと上でハシゴを渡るマーティ)同時に画面に登場するが、これが少々変な粗い画像になっていると毎回思う(特に手前に映っている歌っているマーティ)。

60年代の作品が80年代の作品よりも技術的に優れている所がある(と私は思う)のは、驚くべきである。そういう意味でも、監督のポール・ヘンリードはもっと注目されても良かったのではないかと思えてならない。当時の技術を考えても本作は画期的な作品だと思う。

  • ホラーの傑作『何がジェーンに起こったか/What Ever Happened to Baby Jane?』に続く、ベティ・デイビス後期の新境地
  • 60年代であるのに二役同時画面のシーンに違和感なしの画期的な作品、『バック・トゥ・ザ・フーチャーPART II』と比べても技術的に高度では(私見)
  • 原題の『Dead ringer』は「双子」と「死」のダブルミーニング
  • ベティ・デイビスの生の声は森光子を想起させる

マーガレットの邸宅

– Greystone Mansion/Beverly Hills, California, USA

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