エグゼクティブ・ディシジョン(1996)☆USA|スチュアード・ベアード|カート・ラッセル|ハル・ベリー|デヴィッド・スーシェ|スティーブン・セガール

すてきなアクション

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映画『エグゼクティブ・ディシジョン』(1996年)は、アクション映画として稀に見る驚くべき展開の作品です。他にもツッコミどころが満載で映画ファンならきっと楽しい作品です。まだ観ていない人は、おすすめです!心に残る味わい深い作品となるでしょう☆彡

アテネからワシントンDC行きのジャンボ旅客機がテロリスト達にハイジャックされた。テロリストは、指導者の釈放を要求。しかし、リーダーのナジ・ハッサンには真の狙いがあった。アメリカ国防省はテロリストの制圧と乗客の救助を目的とした軍の特殊部隊が空中からジャンボ機に乗り込む作戦を決行する。

出典元:World of Warner Bros.|Trailer

原題Executive Decision
公開1996
ジャンルアクション
監督スチュアード・ベアード
出演カート・ラッセル、ジョン・レグイザモ
ハル・ベリー、デヴィッド・スーシェ、
スティーブン・セガール
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※詳細はYouTube参照
※2024年7月時点の情報です。情報には変更がある場合がありますので、必ず各サイトをご確認ください。

以下は本作に対するmmの感想と考察です、ネタバレが含まれますのでご注意ください

この映画の特筆すべきところ・・・まずは何と言っても、アクション映画史上最もショッキングな事実から触れないわけにはいかない。

それは、「あの」スティーヴン・セガールが、本作で全くと言っていいほど活躍しないという点(DVDパッケージにはセガールの顔が)。彼の出演時間は、なんと冒頭わずか数十分。それもほぼ戦術的な話し合いに費やされ、いざこれからというタイミングで、まさかの「お亡くなり」に。

セガールと言えば、無敵の武道家にしてアクションの神。その彼が、「あ、これ絶対無敵のセガールが大暴れして解決するでしょ?」と思わせておいて、見事に観客の期待を思いっきり裏切る。

彼がテロリストにハイジャックされた旅客機に乗り込めないまま死亡していくシーンは、ほぼコントのようなもの。せっかく厳かに登場したセガールが、無念にも機体から吹き飛ばされていく様子は、一瞬「これが本当に映画の流れなのか?」と疑ってしまうほど。

後から冷静に考えると、寧ろあの役はセガールでなくても何の問題もなかったのでは?とすら感じさせる潔い退場だ。

アクション映画で「全く活躍しないセガール」を見る機会なんて滅多にない。ある意味、これこそが本作の最大のサプライズかもしれない。

一方で、セガールの穴を埋めるべく奮闘するのがカート・ラッセル演じる、ドタバタに巻き込まれるお堅いインテリ役のデヴィッド・グラント博士。カート・ラッセルと言えば、『テキーラ・サンライズ』や『スターゲイト』のような無骨でタフなキャラクターを演じることが多いが、この作品では全くの別路線。彼は蝶ネクタイのスーツ姿の「文科系ヒーロー」として、戦場に放り込まれる。

冒頭のグラント博士は、空港でカジュアルにパイロット教室の体験をしているという、まるで航空フェアのブースで暇つぶしをしているかのようなスタート。まさか、その数時間後に航空機テロに巻き込まれ、命がけの作戦に参加することになるとは、本人も夢にも思っていなかっただろう。しかし、映画が進むにつれて、空気の読めない「インテリ」が徐々に成長し、最後には少しだけヒーローっぽくなる展開が待っている。

ただ、ラッセル演じるグラント博士はどう見ても「戦闘適正ゼロ」。セガール亡き後チームを統率するジョン・レグイザモとは何かとかみ合わない。彼のどこかオタク感が漂うキャラクター設定が、戦闘エキスパートたちに囲まれる中で、妙に居心地悪そうにしている姿が笑いを誘う。それでも、最終的には彼が一部の決定的な役割を果たすのだから、このキャラクターの成長に観客は意外な満足感を覚えるかもしれない。

そして、博士はハル・ベリー演じる聡明な美女CAとのコミュニケーションは上手くこなせてしまう所が軍人チームとは一線を画す。極限状態の中でもちょっとしたロマンスを盛り込むのがハリウッド映画。

ラストシーンで博士がハル・ベリーをコーヒーに誘って、「一件落着」。死ぬか生きるかの戦いをした後、一緒にコーヒー飲みに行きましょうって。必ず盛り込まれる極限状態における「軽さ」は、古今東西ハリウッド映画以外で観たことない。どこを取ってもアンリアルだから、この際どうでもいいのだれど。

そして、この映画のもう一つの見どころは、『名探偵ポアロ』で有名なデヴィッド・スーシェの登場。彼が演じるのは、イギリスの名探偵ポアロではなく、今回はテロリストの首謀者であるナジ・ハッサン。スーシェと言えば、丁寧で理知的な探偵役が定番だが、ここではそれとは全く異なる役どころで、驚かされること請け合い。

もちろん、テロリスト役でも彼の知的な佇まいは健在。どこかポアロを思い出させる冷静沈着な表情で、飛行機をハイジャックする姿は、知性派テロリストの典型といった感じ。ただ、どうしても頭の片隅で「この人、ひょっとして事件を自分で解決するんじゃないか?」と思わずにいられないのがスーシェの存在感。観客の中には、映画の途中で「もしかして彼が全てを解決する名探偵的展開に?」と淡い期待を抱く人もいるかもしれない。

デヴィッド・スーシェの映画出演は、ベン・キングズレーと似ている。ベン・キングズレーと言えば、『ガンジー』(1983)。アカデミー主演男優賞を受賞し、俳優としても一気にスターダムにのし上がった。しかし、『ガンジー』以外は悪役が多い印象。何といっても、シガーニー・ウィーバーの『死と処女』のベン・キングズレーは全くガンジーっぽさのない悪役だった。悪役がオファーされるのは、彼のルーツに起因するのだろうか。

デヴィッド・スーシェもヒゲを取ると、その風貌は一気にエキゾチックになる。ノーヒゲ、ノーネクタイでシャツの第一ボタンを外すと、イギリス紳士感はゼロ。ポアロ以外では、本作や『バング・ジョブ』(2008)での悪役が有名。個人的には、悪役のポアロは見たくないかな・・・。

ポアロファンからすると、この映画の冷酷なデヴィッド・スーシェこの映画を観るたびにどこか微妙な笑いがこみ上げてくるのは間違いない。

『エグゼクティブ・ディシジョン』は、冒頭からして、「これ以上は無理でしょ?」と思わせる状況が次から次へと押し寄せる。まずはテロリストにハイジャックされるという絶望的なスタートを切り、さらに、その飛行中の旅客機に軍用機がドッキングして秘密裏に侵入するという、ほとんど無理ゲーなミッションが展開される。

しかも、作戦中に何か問題が起きるたびに、普通なら「よし、これで何とかなる!」という瞬間がやってくるはずだが、ここでは「え、また問題発生?」という連続パンチが観客を襲う。セガールが初期に退場してしまうのもその一つで、以降、事態はますます悪化の一途を辿る。高度な戦術で問題を解決するはずのボスを失った部下のみチームたちが、どんどん追い詰められていく様子は、まるでどん底まで転がり落ちていくローラーコースターに乗っているかのような緊張感。

飛行機に侵入したと思ったら、爆弾が仕掛けられていたり、敵に感づかれそうになったり、しかもその間、カート・ラッセルの文科系ヒーローぶりが目立つ場面も多々ある。緊張感の中にも、どこか間の抜けたやり取りが差し込まれ、「この人たち、本当に大丈夫なのか?」と何度も思わずにはいられない。

このように、ストーリーは「これでもか!」というほど一難去ってまた一難の連続。全員が必死に状況を打開しようとするが、どこか抜けていて、見ている側はハラハラするというより、つい笑ってしまう。

『エグゼクティブ・ディシジョン』は、真面目に鑑賞しようとすると損をする。笑いながら楽しむべき、隠れたコメディアクションの逸品である。

  • 一見シリアスなアクション映画に見えて、実はコメディとしても楽しめる作品。
  • あのスティーヴン・セガールが序盤であっさり退場する展開に誰もが度肝を抜かれる。無敵のセガールが、たったの数分で空の彼方に吹き飛ばされる。
  • インテリぶり全開のカート・ラッセルが、蝶ネクタイスーツ姿で不器用にミッションに挑む様子は、まるでアクション映画初心者が戦場に放り込まれたようなギャップが面白い。
  • ポアロでおなじみのデイヴィッド・スーシェが、冷静沈着なテロリスト役で登場するが、どうしても彼の知的な佇まいが滑稽。

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