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もくじ
『パール 』プチ情報
『ミッド・サマー』を製作したA24製作の傑作ホラー。『Xエックス』の殺人鬼老婆の若かりし日を描いた作品。ミア・ゴスと母役のタンディ・ライトの怪演が光る作品です☆彡
『パール 』のあらすじ
1918年、19歳のパールは人里離れた寂しい農場で何事にも厳格過ぎる母と脳性麻痺の父と暮らしていた。パールには夫がいるが戦争で戦地に赴いている。毎日農場で家畜の世話と父の介護をして時が過ぎる。しかしパールには歌手になって有名になるという夢があった。ある時、夫の妹のミッツィが農場を訪問する。ミッツィも歌手を夢見ている。近く教会主催のダンスオーディションがあり、合格すると他の町に慰問に行けるという。退屈極まりない農場生活からの脱出を図るため、パールはオーディションを受けたいと母に言う。
『パール 』予告編
出典元:A24|Official Trailer
『パール 』の作品情報/キャスト
原題 | Pearl |
公開 | 2022 |
ジャンル | ホラー |
監督 | タイ・ウェスト |
出演 | ミア・ゴス、タンディ・ライト デヴィッド・コレンスウェット |
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『パール』のレビュー・感想・考察(ネタバレ注意)
以下は本作に対するmmの感想と考察です、ネタバレが含まれますのでご注意ください
『Xエックス』シリーズ第2弾
ホラー映画『Xエックス』の殺人鬼老婆の若い頃を描いた作品。本作を単体で観ても全く問題ない。老婆パールが如何にしてシリアルキラーとなっていたかを描いている。
登場人物は少なく、舞台も家、農場、映画館、案山子、ワニの沼、オーディション会場等と限られていて、非常に解り易くシンプルな作り。脚本もシンプルで、余計なシーンは一切ない。濃い色調で統一され、そのシーンの映像もブレがない。
相当作り込まれていて、非の打ち所がないと思う。余計な描写がなくきちんと整理されているせいか、ホラーなのにドキドキ感はあまりない。ドラマを観るようにじっくりと観ることができる。
怖いけど、意外とアッサリ
『パール』は怖い怖いという前評判を聞いていたので、心して鑑賞したが、意外と怖がらずに観賞できた。
殺戮シーンは、割と明るい感じで描写されている。白昼堂々、パールがサッとオノやピッチフォークで刺して殺害する。その為、意外とアッサリとしたシーンとなっている。
怖いのは、柄で敷き詰められた壁紙(壁という壁が様々な柄で敷き詰められ、柄物の壁紙はそれだけで気味の悪さを増長させる)、狭い間取り、木造の床、古い家具等、家それ自体が持っている重苦しい空気。加えて、人があまり立ち寄らない孤立した農場。鬱屈した空気の中で増幅される人間の憎悪と狂気。母からの抑圧により、パールがどんどんと狂っていく様が怖い。
そして、パールは、母を見殺しにしたことで、狂気を爆発させる。一人殺すのも二人殺すのも、もう関係が無いとばかりに、自分の人生に邪魔だと感じた人を容赦なくどんどん殺害していく。
殺害した後、遺体をバラバラにするシーンもあるが、軽快な音楽と共にあえてポップに描写。それ程気持ち悪くないように演出されている。
血しぶきが飛ぶというよりは、人間の心理的なところから生まれるホラー色が強かった。
全体として悲しい物語
パールは殺人鬼になる以前から、アヒルをピッチフォーク(干し草用三つまた農具)でグサッと刺して殺せるような残虐性を持っていた。
しかし、そういう残虐性も、母からの愛のない厳しく辛い仕打ちを受け続けて来たからと思うと、痛ましい。毒親の下に生まれてしまったためにパールの精神が歪んでしまったことには、同情してしまう。
母が丸焦げになったのは事故だった。食事中に言い争いになって、母の長いスカートの裾に暖炉の火がつき、あっという間に全身に火が回った。パールは、母が全身丸焦げになった後も母がまだ死んではいないことを知っていた。が、憎い母を殺すいい機会と捉えて、救護せずに放置し、母を死なせた。
黒焦げになった母の遺体が、地下室の階段の途中に横たわる。母は最期の力を振り絞って階段を登ろうとし、力尽きたようだ。パールは、母の遺体に横になって母の腕の中に抱かれる。そして彼女は、「パールを愛している」と優しい言葉を投げかける、在りし日の母の幻覚を見る。
もしかして、この映画で最も人間らしい場面は唯一このシーンではないか。ホラーなのに、ジーンとしてしまった。
母の死後、漸く求めていた母に出会えたパール。
母が少しでもパールに優しさを示したなら、彼女は母を救護したし、その後の殺人は起こらなかったのではないか、と思えてならない。
女優2人の怪演対決
本作は、主演のミア・ゴスの振り切った怪演があってこその作品だ。
中でも、農場に来た映画技師がパールの異常性に気付き立ち去ろうと態度を変えた時の彼女の演技は最高だった。彼の異変をすぐさま察知し、ヒステリックに喚き散らす。狂ったパールの演技は破壊力抜群だった。
母ルース役のタンディ・ライトの演技も凄まじかったことは、忘れられない。
1900年代初頭の親は、子供を労働力としか考えておらず、愛情を注ぐ対象ではないと考えていた人も多かっただろう。ルースはそんな母親の代表格のような人だった。パールに禁欲・厳格に接することに何ら疑問を感じない。微笑さえ見せることの無い、ただひたすら厳しく接する冷酷非情な母ルース。母は殺人を犯すことはないのに、その存在自体がホラーだった。ミア・ゴスに負けず劣らす、タンディ・ライトのヒステリックな演技も素晴らしい。ナイスキャストである。
『パール 』のまとめ
- ホラー映画『Xエックス』シリーズ第2弾であるが、本作単体で観ても問題なし
- 怖いのは孤立した農場のもつ鬱屈した空気と主人公パールが憎悪と狂気を増幅させていくところ
- 母の愛を受けることのなかったパールの悲しい物語
- 主演ミア・ゴスと母ルース約のタンディ・ライトの怪演対決が光る作品