ギルバート・グレイプ|What’s Eating Gilbert Grape(1993)☆USA|ラッセ・ハルストレム|ジョニー・デップ|レオナルド・ディカプリオ

すてきなドラマ

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ギルバートはアメリカの小さな田舎町エンドーラに住む24歳の若者。家族は、父の自殺のため17年間家に引きこもり肥満体となってしまった母、知的障害を持つ弟、姉と妹。町の食料品店で働きながら一家の大黒柱として生活する日々。家族の面倒をきちんと見る反面人妻と不倫をしたり、同時にそんな自分の人生に疑問を感じていた。そんな中、全米を車で放浪する自由奔放な女性ベッキーと出会い、ギルバートの心を揺さぶり、新たな可能性を開いていく。

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若い頃のジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの共演という、今となってはとても珍しい作品です。監督は『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』のスウェーデンの監督、ラッセ・ハルストレム。ある家庭の青年の内面を描いた、考えさせられる作品です☆彡

出典元:Rotten Tomatoes Classic Trailers(Warner Bros.Discovery/NBCUniversal)

原題What’s Eating Gilbert Grape
公開1994
ジャンルドラマ
監督ラッセ・ハルストレム
出演ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス、
メアリー・スティーンバージェン、ジョン・C・ライリー
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以下は本作に対するmmの感想と考察です

若い頃のジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの共演作。この作品のあとくらいから、二人ともどんどん知名度がアップし世界的スターとなって、あまりにも変貌して行った。今二人が並んでもこんな映像は到底撮ることができない。今となっては大変貴重な作品となった。

若き二人が出演しているというだけでも貴重であるが、青春期の葛藤という心の内面を描く内容も二人の出演作品の中では非常に珍しい作品となっている。

物語は、エンドーラというアメリカの小さな田舎町。どこか懐かしく、ノスタルジックな雰囲気が漂う小さな町。そのさびれた風景は、悲しく切ないものがある。

小さな町の一軒家に住むギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)は、父が自殺したことによってショックを受け引きこもりとなり今では肥満で家を出ることすらできなくなった巨漢の母のボニー(ダーリーン・ケイツ)と知的障害を持つ弟のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)を支えるために奮闘する。

ギルバートは、家族の世話をすることで生活を維持するも、その一方で彼は自分の人生について疑問を抱えている。彼は町を出て新たな人生を始めたいという強い願望を抱きながらも、家族を見捨てることができないという葛藤に苦しむ。知的障害を持つアーニーを守りながら、彼の世話をすることが彼にとって大きな負担となっていた。

若く独身であるのに自由を謳歌できず、環境に縛られて自分の人生を生きることができない不自由さ。家族がいるということは一つの幸せであり勿論感謝をしなければならないものの、時には人生の足枷と感じてしまうことも。

たとえ兄弟が知的障害を持っていても、他の兄弟には自分の人生を生きる権利がある。その兄弟の為に人生を犠牲にしていると感じているなら、それを取り除くのが父母(本作では母のみ)の役目であるはずである。

しかし、ギルバートの母は母で人生をたくましく生き抜くことができない大きな問題を抱えていた。父が自殺したことから、生きる気力を失ったのである。

ギルバートはそんな母の気持ちも十分理解していたからこそ、母に当たるわけで派もなく家族の面倒を見ていた。長男である兄のように家を出ることなく。

親が機能しなくなった家庭では、物わかりの良い子供が犠牲となる。

しかし、ギルバートは完全に自分を犠牲者であるとも感じていないようだ。彼は家族を愛し、弟想いだ。そして、ギルバートの心には、ただ漠然とこのまま自分の環境を変えることができないのではないか、という不安だけが募る。

ギルバートはアーニーを愛しているのに、アーニーが思い通りに行動しないことから受けるストレスの狭間で、アーニーを本気で殴ってしまい言ってはいけない一言を発してしまう。

「アーニーに脳があったら」

このセリフは痛ましかった。家族として、思ってはいけないことだ。今までアーニーに対して兄として接してきたことが全部ウソになる。しかし、そう感じてしまうことを責めることはできない。もし自分が同じ立場だったらと思うと、同じことを思うだろう。

本来、アーニーはアーニーであって、障害の有無など関係が無いはずだ。しかし、社会で生きていく以上、アーニーの個性と付き合うのも並大抵ではない。

ギルバートは弟想いである。「障害のない人間とは何か」という根源的な問いをした所で社会には受け入れられない。彼はそれも十分承知で、諦めの境地に達している。

人一倍家族の面倒を見ていても、家族の中でも孤独、そして、社会においても孤独なギルバート。精神的に追い込まれたギルバートがもっと痛ましかった。

ジュリエット・ルイス演じるベッキーは、どうにもやるせないギルバートの心に新たな風を巻き起こす。快活な笑顔に爽やかなショートカット。常識に縛られない自由な考え方。彼女のすがすがしい笑顔とポジティブな姿勢がギルバートと物語に新たなエネルギーを与える。

ギルバートはこういう人を待ち望んでいただろう。ベッキーはさながら白馬の王子様のようだ。

しかし、ベッキーの魅力を持ってしても家族から離れることはできなかった。ギルバートは責任感の強い青年だった。

そこへ、母ボニーが自らの不甲斐なさをギルバートに詫びる。そして、彼女はベッドで死んでいた。

母ボニーが死に、彼女を火葬するために家ごと燃やした。ギルバートは思いがけずして母から解放される。もしかして、ボニーはこれ以上家族のお荷物ではいられないと思い立ち、自ら命を絶ったのか?映画では明確には描いてはいないけれども。

ラスト、ギルバートとアーニーは町を出る。道路沿いでベッキー(ジュリエット・ルイス)のトレーラー・ハウスを待つ二人。

「アーニーが、これからどこに行くの?と尋ねた。」

「何処へでも」

ジョニー・デップはと言えば、衣装もド派手で化粧も濃いキンキーなキャラクターの印象が強い。多くはティム・バートンと出会って彼の作品に出演をすることが多くなったからであろう。『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003)、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)等々。ある意味、そのぶっ飛んだキンキーキャラこそが彼の持ち味かもしれない。

しかし、個人的には、本作や『妹の恋人』(1993)のような、これと言った派手な事件が発生しない物語に登場するジョニー・デップが好きである。幼少期~少年期はそれ程裕福ではない家庭に育ったようで、口数の少ない表情のジョニー・デップには幼少期の暗い時代に味わったっであろう孤独の影が少し垣間見えて、とても切ない気分にさせるから。

本作のジョニー・デップは、家族の絆や責任、自己の幸福との間で揺れる主人公ギルバートの内面を丹念に描き出している。ジョニー・デップ史上、これ程内向的で複雑なキャラクターは珍しい。『シザー・ハンズ』(1990)も十分内向的なキャラクターではあるけれども、生身の人間ではないので普通の人の役とは言えない。芸達者なジョニー・デップなので何でもこなしてしまうが、もう少し普通の人の役を観て見たい。

普通の人ではなく一風変わったところで、『Mr.タスク』(2014)、『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』(2016)がある。これらのジョニー・デップは、これまでとは全く違う超異色なキャラクターを演じている。ちょい役なうえに付け鼻をしているから、どこに出ているか見逃す程である。主人公ではないので、どこで登場するか良く見ないとわからないので注意である。ジョニー・デップの娘(リリー=ローズ・デップ)が主人公の女子高生の一人を演じており、多分遊びで出演したのではないかと思う。映画もナンセンスなギャクが炸裂する爆笑ブラックコメディなので、おすすである。

本作公開当時、まだディカプリオはそれ程ブレイクしていなかった。知名度はジワリと上昇しつつあったが、まだまだキャーキャーなっていなかった。

ディカプリオの演技が素晴らしいところは、本来の美形を封印して、全く男前に見えさせなかったこと。腰や指先の動きも上手に表現できていた。感情豊かな演技で知的障害を持つ少年の複雑な内面を見事に表現できていて、素晴らしかった。

当時は痩せていて、小顔で八頭身以上あるスタイル抜群だったディカプリオ。最も、日本のNHK教育で放映されていた『愉快なシーバー家』に出演していた当時のディカプリオをカッコイイと思ったことはなく、年齢の割に成長が遅い、幼いという印象だけだった。

ギルバートに殴られても、再会できたことを喜ぶ心優しいアーニーの姿に涙が出る。

ジョニー・デップも役の幅が広いけれども、ディカプリオも色々な役を演じることができ、本当に器用な俳優さんである。欲を言えば、もう少し彼の汚れ役を観てみたい。

  • 家族への愛と自分の人生を歩むことへの葛藤という深いテーマ
  • 町にやって来たベッキーはギルバートの心に新たな風を巻き起こす
  • ジョニー・デップが複雑な家庭の普通の人を演じている珍しい作品
  • レオナルド・ディカプリオの演技も天才的で、素晴らしい
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