イエスタデイ(2019)☆UK|ダニー・ボイル|ヒメーシュ・パテル|リリー・ジェームズ

すてきな恋愛

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売れないシンガーソングライターのジャック・マリック(ヒメーシュ・パテル)は、音楽の道を諦めかけていた。と、その時、全世界で12秒間の謎の停電が発生。彼はその間に事故に遭う。目覚めると、ビートルズの存在が消え去った世界にいることに気づき・・・。

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映画『イエスタデイ』(2019年、ダニー・ボイル監督)は、ビートルズの音楽が世界から消え去るという奇想天外な設定を基に、音楽と自己発見の旅を描いた可愛いラブストリーリーです。☆彡

出典元:

原題Yesterday
公開2019
ジャンル恋愛・コメディ
監督ダニー・ボイル
出演ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ
ケイト・マッキノン、エド・シーラン
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※2024年7月時点の情報です。情報には変更がある場合がありますので、必ず各サイトをご確認ください。

以下は本作に対するmmの感想と考察です、ネタバレが含まれますのでご注意ください

もしもビートルズがいなかったら?という世界を舞台にした物語。何ともヘンテコな設定。

アイデア勝負というか、そんなアニメのような設定で何を描こうというのか・・・?と思ったのが第一印象。でも、これが観ると、意外にハッピーになれる不思議な作品だった。しかも、ジャンルとしてはラブストーリーと言っていい。

停電事故をきっかけに、ジャックは世界中で自分だけがビートルズの名曲の数々を知っているという好機を得た。そして、彼も一応歌手の端くれであるから、それを利用しない手はない。ビートルズの楽曲を自分のものとして発表し、一躍スターの座に上り詰める・・・。

その過程で内面の葛藤や道徳的なジレンマに直面し、最後には本当に大切なものは何かを見つけ出す。彼の成功とそれに伴う孤独、罪悪感、恋人エリーとの距離、がストーリーの中心を成し、観客に真実の価値や誠実さについて問いかける・・・というのが物語の流れである。

ビートルズとの最初の出会いは、「ひらけ!ポンキッキ」だった。「ポンキッキ」では様々な子供向けの映像、短編アニメーションが流れる。そして、そのBGMはほぼビートルズだった。

「ララ、ラーララ、ラーラーラー、カモン、カモーン、カモン、カモーーン、プリーズ、プリーズミー~」という音楽に合わせて、人形、切り絵や粘土を使ったコマ撮りストップモーションアニメの映像が流れる。シュール極まりない。チェコの鬼才ヤン・シュバンクマイエルの作品からグロさを全部抜き取ったショートフィルム。

高校生のとき、朝、ポンキッキでビートルズがばしばし流れる光景を見て、ああ、ビートルズはもう歴史上の人物になったのだと思った。もはや教科書レベルと思った。子供にも解り易い、シンプルかつキャッチ―な曲調。子供向け番組で流れても違和感がないなんて、ビートルズはもう谷川俊太郎のような地位になったのだ、と思ったのを覚えている。

そのうち本当に音楽の教科書、歴史の教科書にビートルズが登場する日は近い(というか、もう載っているかもしれない)。ビートルズは現代ロック&ポップスの原点だ。ビートルズに影響されていない現代のバンドはいないと言っていいのではないか。手塚治虫に影響されていない漫画家がいないように。

『イエスタデイ』でビートルズがいなかったらという世界を描いてみたいと考えたのは、それ程驚くべきことではないのかもしれない。特にイギリスの人にとっては。何故なら、今や世界中どこでも、私たちはビートルズの音楽か、ビートルズに影響を受けた人の音楽を毎日どこかで知らないうちに聴いているのだから。

ジャックの物語は、成功の代償や自己の本当の望みを見つめ直す過程を描いており、観客に普遍的なテーマを問いかける。

ジャックの成功は単なる音楽の再発見にとどまらず、他者の創造性や努力を奪うものである。これは、ダニー・ボイルが過去の作品でしばしば描いてきたテーマのひとつであり、例えば『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)でも同様の倫理的葛藤が描かれている。人間は成功を追い求めるあまりに人間性や道徳が置き去りにするという、犯しがちな過ちである。

ジャックが感じる孤独と罪悪感は、現代の成功に対するプレッシャーや自己のアイデンティティの喪失を反映している。

ジャックの成功が進むにつれて、彼の人間関係も変化する。特に彼の親友であり、元恋人であるエリーとの関係が物語の重要な要素だ。エリーはジャックの成功に対する複雑な感情を抱えながらも、彼を支え続ける。

エリーは、ジャックにとって唯一の現実であり、彼が最終的に名声よりも愛を選ぶ動機となる。これは、愛と誠実さが最終的に勝利するという希望的なメッセージを伝えている。

名声を得たら、無名時代に支えてくれた妻ではなく、同じ芸能界にいる有名人を妻と再婚するケースが割とある。『イエスタデイ』は青春映画であるので、そこまで厳しいリアリティは追求せず、収まるところに収まるので、安心して鑑賞できる。

『イエスタデイ』は、ダニー・ボイル監督の「ポップな」スタイルが炸裂した作品。監督の手にかかると、ビートルズの名曲たちがただの懐メロにとどまらず、現代のエンタメの新しい風景を創り出す。彼の映画にはいつも、ポップカルチャーのエッセンスがスパイスとして加えられており、『イエスタデイ』も例外ではない。

ダニー・ボイルの映画には常に視覚と音楽の楽しさで溢れている。『イエスタデイ』はその代表例と言えるだろう。ビートルズがいなかったらという奇想天外な設定も然ることながら、そのポップなセンスは、視覚的な演出にも表れている。

映画の色彩やカメラワーク、そして音楽シーンのダイナミズムは、彼の特徴的なスタイルを反映している。特にジャックがビートルズの曲を屋上で披露するシーンでは、大観客にエネルギーを与えるような華やかさとともに、彼の音楽がもたらす変化と感動を力強く伝えている。

初期の作品『シャロウ・グレイブ』(1994)や『トレインスポッティング』(1996)にも若者の葛藤が描かれていた。『イエスタデイ』や『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)よりも、暗く、若者の闇によりフォーカスがあったっていた気がする。

監督が主演の俳優との年齢差が離れていくにつれ、作風が、より若者の「陽のエネルギー」を捉えて前向きに描くようになった気がしてならない。それがポップでカラフルな映像表現に通ずると言えるのではないか。

また、ダニー・ボイルはポップカルチャーのアイコンを再評価することにも長けている。『イエスタデイ』ではビートルズの音楽が主題だが、その音楽の普遍性と影響力を強調し、再びその偉大さを認識させてくれる。このアプローチは、彼が過去の作品でもしばしば見せた、文化的アイコンに対する新しい視点を提供するというスタイルと一致している。『スラムドッグ$ミリオネア』ではインドの文化や人々を新しい視点で描き出し観客に強い印象を残したが、『イエスタデイ』でも同様に、ビートルズの楽曲を通じて新しい感動を提供した点は注目するべき点だろう。

音楽はこの映画の心臓部であり、ビートルズの名曲が新しい形で生まれ変わる。ジャックが演奏する「レット・イット・ビー」や「ヘイ・ジュード」は、原曲の持つ力を失わずに、新たな感動を提供した。ヒメーシュ・パテルの歌唱力と演技力も特筆すべき点であり、彼は単なる模倣ではなく、自身の解釈を加えたビートルズの楽曲を披露した。

この映画で注目したのは、コメディアン兼女優のケイト・マッキノン。ジャックのマネージャー、デボラを演じている。主演のヒメーシュ・パテルやヒロインのリリー・ジェームズも勿論良かったけれども、大注目したのは彼女。

というのは、彼女は美女枠ではない脇役ながら、結構グイグイ画面に食い込んでくる(ように感じた)。その感じが、日本の若手演技派女優、円井わんとソックリな雰囲気だった。絶対に観客に媚びることなく、寧ろ敵意むき出しで画面をはみ出すような演技をする円井わんと同じく、ケイト・マッキノンにもガッツを感じさせる女優さんだ。

ケイト・マッキノンを最初に見たのは『バッド・スパイ』(2018)。別れた恋人がスパイだったことから国際的な陰謀に巻き込まれた普通の女性とその変わり者の親友の騒動を描いたスパイアクション。ケイト・マッキノンはその変わり者の親友を演じていて、怖いもの知らずなキャラクターをロックに演じていて、非常に印象深かった。

そのキャラクターに比べると、『イエスタデイ』のケイト・マッキノンは少々大人しさがある。

彼女は『サタデー・ナイト・ライブ』出身のコメディアンで、ヒラリー・クリントンやジョディー・フォスター他の物まねで有名になったそうだ。今後も異色な役柄で活躍することを大いに期待したい。

  • もしもビートルズがいなかったらというヘンな世界が舞台ながら、不思議とハッピーな気分になる
  • テーマは成功と倫理の葛藤であるものの、全体的にはラブストーリー
  • 今や世界共通の音楽文化であるビートルズの偉大さを再発見することができる
  • ダニー・ボイルのポップなセンスが炸裂した作品

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