バタフライはフリー(1973)/Butterflies Are free☆電光石火の青春の恋と母の乱入

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出典元:Sony Pictures Entertainment/Official Trailer

サンフランシスコの安アパートに引っ越してきた自由奔放で快活な女優志望の娘ジル。隣人に住むのはミュージシャン志望の盲目の青年ドン。ジルはドンを訪問すると、二人は直ぐに意気投合。そこへ、子離れ出来ていないドンの母が現れて・・・。

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観るとハッピーな気持ちになること間違いない、とても素晴らしい作品です。若者だけでなく、親世代が観ても見ごたえがあります。ぜひ、もっと知ってもらいたい作品です☆

原題Butterflies Are free
公開1973
ジャンル恋愛
監督ミルトン・カトセラス
出演ゴールディ・ホーン、エドワード・アルバート
アイリーン・ヘッカート
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以下は本作に対するmmの感想と考察です

レオナード・ガーシュ原作の大ヒットブロードウェイ舞台の映画化。日本でも何度か舞台化されているので、もしかしたら知っている人もいるかもしれないが、知名度は極めて低い。

気の合う男女が意気投合したら、距離が縮まるのは異常に速い。ジルが引っ越したその日のうちに、二人いは下着姿の関係にまでなった。電光石火である。

体の関係になったからと言って、大人の男女のように重苦しくならない。下着姿の二人はまるで二匹の兄弟の野良猫のようにじゃれあっているようだ。二人が若いというのもがあるが、明るい二人の性格も影響している。

若さ溢れる主人公二人のやり取りを見ていると、誰もが青春を思い出しウキウキした気分にさせてくれて、観ている方もハッピーな気分になる。

「僕が盲目だから一緒にいる、または、僕が盲目だから離れていく。どちらも沢山だ、盲目であることを理由にされるなんて。」

全盲というハンディがあっても、どこまでの前向きな青年ドン。前向きであると同時にスマートでもある彼は、好きな子を前にしても怯むことはない。

「君は僕を必要としている。僕が君を必要としているよりもずっと。」

ジルはジルで、自由奔放で天真爛漫ではあるものの、同時に繊細な心の持ち主だ。乱入してきた母の息子への心配も大いに理解できる。いくらドンと意気投合しても、自分のような娘は似つかわしくない。早々に立ち去るのがドンのため。そういう所にも気を回すことができる娘である。

頭の回転が速く気が強くも、ドンの母の壁は大きく分厚かった。敗北したジルは好きな人ができたとドンに嘘をついて身を引こうとするジルがいじらしすぎる。

下着姿で楽しい時間を過ごす二人に乱入するのはドンの母である。よりによって、一番まずい時に、一番似つかわしくない人が登場する。

人生経験豊富な母は、息子の性生活という一番見たくない光景にもビクともしない。寧ろ、息子の弱みを握って活力を得たと言わんばかりに、刑務官のように冷静沈着に若い二人を追い込む。

母は子供のプライベートにズケズケと土足で入り込む。容赦はしない。母には容赦をしなくていい十分な理由がある。子供を産んだのは自分だから。何といっても出産まで同じ体を共有した間柄。母というポジションは、水戸黄門が悪人に前にして見せつける「紋所」くらい破壊力がある。

子供の出産シーンを考えると、さながら映画『エイリアン』(1979)の地球外生命体が誕生していくようなホラーな光景と似ていなくもない、ヒトの出産とはある種ホラーである(私も経験しました)。同じ細胞を共有し、へその緒を通じて栄養補給してきた子供が出産を機に分裂する、もはや自分の分身と言っても過言ではない。

母であればそういう気持ちがどこかにあるであろう。だから母はどこまでも強気だ。

そんな母にも敗北の時期が訪れる。子供の自立である。子供が意思をもって、自己の世界へと旅立とうとするとき、母は寂しさのあまり必死に引き止める。かつて一体だった子供が離れていく寂しさと言ったら。

しかし、母は敗北して終了ではない。母の底力は偉大だ。子供を産み落とした瞬間から背負ってきた使命がある。それを実行しなければならない。子供を一人前にするということ。母はいずれ先に死ぬ。子供が親なしで自由に生きていけるように道筋を作ってあげることもが親の最大の役目。

ジルを失い失恋した息子を前に、再び母の威厳をカムバックさせて息子に叱咤激励。復活した母はもう子離れできていない母とはひと味違う。母も息子の恋愛経験を通じて成長を遂げる姿にも注目である。

本作は主要登場人物の3人が全員主役と言っていいだろう。3人目の主役は勿論、母である。序盤の口うるさい子離れ出来ていないだけの鬱陶しい母と思いきや、後半では息子を鍛えなおす厳しさと優しさを、母の孤独と悲哀を織り交ぜながら表現。ジルの敵役に留まらず、母は母なりに子が人生をたくましく生きて欲しいと願いがにじみ出た演技は圧巻だった。

母役のアイリーン・エッカートは本作でアカデミー助演女優賞を受賞した。

背の高い盲目の青年を見事に演じているのはエドワード・アルバート。知名度はそれ程高くないが、本作での演技は圧巻。

ジルが引っ越すと聞いた時のドンの絶望感溢れるどん底の表情が何とも言えない。盲目の演技も上手だけれども、この時の演技が凄まじい表現力と言ったら。

本作でゴールデングローブ新人賞を受賞。もっと評価されていい俳優さんだった。惜しくも2006年に55歳という若さで亡くなっている。

因みにお父さんはエディ・アルバート。『ローマの休日』(1953)でグレゴリー・ペックの相棒カメラマンを演じていたのが有名。

ゴールディ・ホーンは下着姿で歩き回る。そのスタイルの華奢なことと言ったら。女優さんは非常に特殊な体型をしている。胸が大きく腰回りがキュッとしているといったいわゆる米雑誌『PLAYBOY』のカバーガールのようなナイスバディではないので、当時としてはスタイル抜群と言えないかもしれない。どちらかと言うと栄養失調気味。高カロリーのアメリカの食生活でこのような華奢な体型をキープし続けることは非常に困難ではなかろうか。日本なら華奢な女性は多い。

70代のゴールディ・ホーンであるが、元祖小悪魔系アンニュイ女優で一世風靡した。日本で言うと、『月曜日のユカ/Only On Mondays』(1964)の加賀まりこを彷彿とさせる。アンニュイ系と言えば、エマニュエル・べアールやバネッサ・パラディも同様のカテゴリーに入るであろう。ただ、ゴールディ・ホーンのアンニュイさは男を惑わす小悪魔的要素は小さく、どちらかというと自由奔放で明るく、ヒッピー要素が強いイメージである。イングリット・バーグマン後半の異色コメディ『サボテンの花/Cactus Flower』(1969)でも、ゴールディ・ホーンの自由奔放さが炸裂していて必見である(イングリット・バーグマンの地味なおばさんナースぶりも必見)。

同じように出会って早々にベッドインして始まる男女の物語は、『ジョンとメリー』(1969)である。こちらは同じように若者ではあるが、本作の二人よりも少し年も取っていて、人生経験も豊富で、無邪気な二人ではない。アメリカ東海岸の物語ということもあってか、本作に比べるとシリアスな仕上がりとなっている。

  • 大ヒットブロードウェイ舞台の映画化作品
  • 出会ったばかりの二人の若者の恋愛と母の子離れを描く
  • 盲目青年役のエドワード・アルバートはゴールデングローブ新人賞を受賞
  • 母役のアイリーン・エッカートはアカデミー助演女優賞を受賞
  • 若い頃のゴールディ・ホーンはスタイル抜群
  • 東海岸が舞台の類似作品に『ジョンとメリー』がある

– the Broadway and Kearny intersection, San Francisco, USA

ジルが冒頭で引っ越すアパートに行くために上る坂

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