何がジェーンに起こったか|What Ever Happened to Baby Jane?(1962)☆USA|ロバート・アルドリッチ|ベティ・デイビス|ジョーン・クロフォード

すてきなホラー・スリラー・ミステリー

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ベティ・デイビスとジョーン・クロフォードという二大女優が年老いてもなお新境地を開拓して見事復活を遂げた記念すべきサスペンスホラーです。仲が悪いことで有名だった二人が共演するということも当時話題となりました。特にベティ・デイビスの振り切った演技は圧巻です☆

かつて少女アイドルとして一世風靡した妹のジェーンは、大人になってからは大根役者と言われ干されかかっていた。一方、ジェーンの姉のブランチは少女時代は妹の陰に隠れ父親からも足蹴にされていたが、大人になってからは演技派女優として成功した。確執のある姉妹の間で自動車事故が起こり、姉は下半身不随となった。事故をきっかけに二人とも芸能界から消え、二人は古い屋敷で暮らすのだった。妹は姉の介護をしながら、姉は妹に介護されながら。

出典元:Warner Bros. Entertainment/Official Trailer

原題What Ever Happened to Baby Jane?
公開1962
ジャンルサスペンス/ホラー/スリラー
監督ロバート・アルドリッチ
出演ベティ・デイビス、ジョーン・クロフォード
ビクター・ブオノ
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以下は本作に対するmmの感想と考察です

血しぶきなし、お化けなし、狂った人間が一番ホラーだと思い知らされる傑作。

美男美女映画、ヒーロー映画、アクション映画に飽きたら是非観て欲しい。公開後50年以上経って観ても全然色褪せない、いまなおピカ一のホラー。

本作を観たら、一つ大人になれるかもしれないと思わせる、鑑賞しただけで人生の経験値が間違いなく上がる、色々考えさせられる1本。

本編が始まる前の前振り部分で姉妹の確執の経緯と事故を説明し、事故部分はサクっとあっさり終了する構成。

ベイビージェーン人形の破壊された頭部部分の黒い闇からタイトルの『What ever happened to baby Jane?』が不穏なBGMと共に登場する。

それだけで怖さ十分、秀逸な出だしである。

本作のベティ・デイビスは凄すぎる。ここまでやってくれる女優さんがいるとは、天晴れである。

悪女役は何度も演じて来た彼女だけれども、本作で更に役者のステージを上げた。誰もやりたがらない精神を病んだ狂気の役柄を見事に演じ切る根性の凄まじさ。新境地で、もう既に自分のものにしている完成度。

本作でもアカデミー主演女優賞にノミネートはされたが受賞を逃しているのが疑問中の疑問。ここまで突き抜けた演技をしているのに受賞できないことがあるとは、不運としか言いようがない。とはいえ、ベティ・デイビスは本作の成功により落ち目から完全復活した。

ベティ・デイビスの演技が凄すぎて、姉役のジョーン・クロフォードについて、正直あまり何の感情も湧かなかったというのが正直なところ。

強いて言うなら、恐れおののいたりしているジョーン・クロフォードを観て、グレゴリー・ペックによく似ているなと思ったこと。人間の顏で美形になる種類として、女性は男顏、男性は女顏のタイプが夫々美男美女になる確率が高いと聞いたことがあるが、ジョーン・クロフォードは、目鼻立ちがくっきりはっきりしていて、おまけに眉毛も剛毛で、間違いなく男顏だなという感想。

本作ではどちらかというといい役のジョーン・クロフォードであるが、実際はこっちの方が相当ヤバい人だったというのは業界では有名な話である。

ジョーン・クロフォードが亡くなった翌年の1978年、養女が『最愛のマミー』という暴露本を出版。その中にはジョーン・クロフォードの毒母ぶりが満載だった。深夜に帰宅したジョーン・クロフォードが寝ている娘をたたき起こして掃除させたり、首を絞め殺そうとしたり。外向けには理想の母娘を演じるも、カメラマンがいなくなったら虐待されたとか。

そんなキョーレツな性格だから敵多しで、ベティ・デイビスとは有名な犬猿の仲。だからこそ、本作で二人を競演させたことでも話題をかっさらう事ができた。

また、ジョーン・クロフォードは、ベティ・デイビスが本作の演技でアカデミー主演女優賞にノミネートされたことを心底妬んでいたという。しかし、ジョーン・クロフォードは通常メイクでかつノーマルな人の役どころだから、白塗りのベティ・デイビスを前にして勝ち目はあるはずがない。

当時まだ50代前半のベティ・デイビスであったが、80代の老婆にしか見えない。顏のシワや顎のたるみがリアルそのもの。当時の50代は今の50代よりもずっと老けていたと思うが、特殊メイクだったのだろうか。

『八月の鯨』(1987)の時、ベティ・デイビスが90歳位に見えたので(実際は80歳)、だいたい実年齢より10以上老けて見える人ではある。 そう言えば、『エクソシスト』(1973)のマックス・フォン・シドーも80代にしか見えなかったけ・・・、当時何とまだ40代半ばであるから驚く。

ジェーンの狂気を象徴する「気持ち悪すぎる狂乱メイク」は、80年代~90年代に少年少女だった日本人なら「ある人」を絶対思い浮かべるのではなかろうか。

白塗りと言えば、志村けんである。バカ殿様そっくり。更に、ジェーンが外出する時は通常のメイクに一味加えてアップグレードする。左の頬に小さいハートマークを入れる。ジェーンのキメメイク。それも同じく志村けんを思い出させる。変なおじさんである。変なおじさんは、右の頬に黒子がある。もう、どう考えても、ジェーンは志村けんにしか見えない。

志村けんも本作のベティ・デイビスを参考にしたのではなかろうか。そんなことを考えながら、妖婆ベティ・デイビスの怪演に見入った。

なぜタイトルが『何がジェーンに起こったか|What Ever Happened to Baby Jane?』である理由が、ラストの海岸のシーンで判明する。冒頭の事故のシーンが異常にアッサリしている理由もここで解るようになっている。

仕掛けをそこここにしておいて、最後で綺麗に一つ一つ種明かしがなされていく気持ちよさも観ていて唸るところ。伏線を張るだけ張って、何の回答も用意していないロマン・ポランスキーの『ナインスゲート』(1999年)とは大違い。

そして、ラスト、ジェーンがアイスクリームを二つ、姉のためにも買っていくところは、何とも感慨深くもある。ジェーンは姉の告白を聞いて、姉を許したということであろうか。それとも、もうそんなことどうでもいいということなのであろうか。

  • 公開後50年以上経って観ても色褪せないピカ一のホラー
  • 大女優ベティ・デイビスの大復活作品
  • ベティ・デイビスは渾身のバカ殿様メイク
  • ラストの海岸で死にかけの姉と会話するジェーンの演技が感慨深い

姉妹の邸宅  :South McCadden Place in LA, USA

エドウィンの家 :De Longpre Avenue in LA, USA

ラストの海岸  :Westward Beach in Malibu

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